瓦記録方式とも呼ばれるSMRはより多くのデータを保存するための技術であり、2TB以上の大容量モデルで主に採用されています。一般ユーザー向けに流通しているHDDはSMR採用製品が多く、法人向けHDD製品は従来通りのCMRが多い傾向にあります。
個人ユーザーにも普及しているNASに使用するHDDについてはパフォーマンスや信頼性の面からCMRが推奨されていますが、実際にはSMRかCMRか公表されていないHDDも多く存在しています。そこで今回はSMR採用HDDとNASの危険な組み合わせについてご紹介します。
SMRはキャッシュを使い切ると読み書き速度が低下する
SMRはHDDのプラッタへ書き込みする際にデータトラックを一部重ねて記録することでデータ密度を向上する技術です。連続で大容量のデータを読み込んでも読み込み速度は低下しませんが、連続で大容量のデータを書き込むと書き込み速度が低下する特性があります。
これは重ねて記録するデータをブロック単位で管理しており、一度キャッシュしてから書き込むためです。キャッシュ容量は数十GBしかなく、100GBを超えるデータの書き込みは苦手です。
外付けHDDなどでは問題ないSMRもNASで使用するとトラブルの元
NASに使用するHDDはRAID構成を組むことが多く、各HDDの状態を常にチェックしながらNASは動作します。もしNASに大容量のデータを書き込んでSMRのキャッシュを使い切ってしまうとHDDの書き込み速度が極端に低下し、NASはHDDが異常動作したと判定するケースがあります。
同様にRAID構成を復旧する際も既存のデータを大量に読み書きすることで復旧の失敗やRAID構成が壊れてデータを失う事例もあります。
SMRかCMRか公表されていないHDDはサードパーティーの検証済み製品リストで確認可能
販売しているHDDがSMRかCMRか公表されていないモデルは多くあり、NASメーカーでは独自にSMR採用HDDをまとめた検証リストを公表しています。
NAS向けを謳うHDDについては多くのメーカーがSMRの採用をさけており、一定の情報開示もされていますが一部例外もあるため購入前のチェックは欠かせません。
NAS向けHDDのWD RedシリーズではSMRとCMRが混在しているため要注意
WesternDigitalのRedシリーズはNAS向けに高信頼性を謳っており、SMRを採用していない点も特徴の一つでした。
しかし2TB以上のRedシリーズでSMRが採用されており、実際にはNASに適さない場合がありました。全てのRedシリーズがCMRではない時点で安心して選べる製品とは言えないことは確かです。
まとめ
RAID構成を組みデータを守ることを目的にNASが選ばれることが多く、そのデータを危険にさらしかねないSMRはやっかいな存在と言えます。
実際にSMR採用HDDを使ったばかりにバックアップデータなど大容量ファイルの書き込み失敗や、故障したHDDを入れ替えて復旧させる工程でデータ消失を起こす事例は多数報告されています。
このようなトラブルを避けるには、WD Redシリーズのようにメーカーが仕様を公表していないHDDを避けるか検証サイトで入念に調べてから導入することが大切です。