2025年 4月 の投稿一覧

CPUの真の性能を引き出す鍵「VRMフェーズ数と電源設計」

自作PCやゲーミングPCでは、CPUやGPUの性能に目を向けがちです。

しかし、実はそのパフォーマンスを陰で支えている重要な存在がマザーボードであり、さらに言うならば「VRM(電源回路)」です。

VRMへの考え方次第で、マザーボード選びがかなり変わってきます。今回はVRMフェーズ数の意味や設計思想、マザーボード選びで注目すべきポイントを解説します。

VRMフェーズ数とは何か?

VRMフェーズ数とは、マザーボードの仕様表でよく見かける「16フェーズ」「20フェーズ」という表記。これはCPUに安定した電力を供給する「VRM」のフェーズ数です。

ちなみにVRMとは「Voltage Regulator Module」の略で、CPUやGPUに対して、必要な電圧に変換して安定供給するための電源回路です。

パソコンの電源から来る電圧は高すぎるため、そのままではCPUは動きません。そこで、VRMが電圧を低く・安定させて供給することで、パーツが正常に動作します。

もっとざっくり言うと、「CPUにとっての電気の調整弁」と捉えるとイメージしやすいです。

VRM(電圧調整回路)の電力供給を分担する回路の数のことです。
フェーズ数が多いほど、1つ1つの回路にかかる負荷が分散され、発熱が抑えられたり、電圧の安定性が向上したりします。
特に、高性能CPUやオーバークロック時に重要視されます。

また、VRMフェーズ数とはざっくり言えば、「CPUに電気を送るときの“チーム人数”」ですね。

人数(フェーズ数)が多いほど、1人あたりの負荷が軽くなり、安定して仕事(電力供給)ができる、というイメージです。

フェーズ数が多いほど、1つの回路にかかる負荷が分散され、発熱が抑えられ、電力供給が安定します。

フェーズ数だけでは語れないVRMの世界

一方で、「フェーズ数が多いほど良い(高品質)」というのは、半分正しく半分誤解でもあります。

近年のマザーボードには、実質的なフェーズ数を増やすため「ダブラー回路」を用いるケースが多いからです。ダブラー回路とは少ないコントローラーでフェーズ数を“見かけ上”増やすための回路。

ダブラー回路を使用し、数字上は20フェーズでも実際は10フェーズ×2という設計も存在します。このタイプのマザーボードは、変換効率や応答速度が純粋なダブラー回路なしの設計に比べて劣る場合もあります。

また、VRMの性能を決定づけるのはフェーズ数だけではありません。各フェーズで使用されるDrMOSやコンデンサ、チョークコイルといった部品の品質も非常に重要です。

高品質な部品を使用しているマザーボードは、フェーズ数が少なくても発熱が少なく、電力供給が安定しています。

多フェーズ派 vs 質重視派の論争

VRMフェーズ数については、自作PC界隈でたびたび議論になります。

「フェーズ数は多ければ多いほどいい」という派閥と、「数よりも部品品質と設計思想が大事」という質重視派に分かれることが多いです。私の知人でも両方の派閥がいますね。

実際に、同じCPUを異なるマザーボードで運用した際、発熱や消費電力、安定性に微妙な違いが現れることがあります。これはVRMの設計の違いだと言う意見が多いです。

普通に使っている分にはわからないのですが、数値で計測するとVRMフェーズ数の違いがはっきり出ます。

とはいえ、フェーズ数まで見るユーザーは少ないですし、実際に5フェーズ以上あれば不便はほとんどないですからね。自己満足と言われればそれまでなのですが…。

縁の下の力持ち「VRM」にも目を向けよう

CPUやGPUの性能ばかりに目を向けていると、見落としがちなVRM設計。しかし、その違いは高負荷時の安定性やオーバークロック耐性に直結します。

次にマザーボードを選ぶ際は、ぜひフェーズ数だけでなく、ダブラーの有無や部品品質までチェックしてみてください。

電源設計にこだわることで、PC全体のポテンシャルを最大限に引き出すことができるはずです。

「HDDのフォーマット方法」最適なのはどれ?

新しいHDDを購入したときや、中古のHDDを再利用したいときに必ず行う作業が「フォーマット」です。

しかし、「クイックフォーマット」「通常フォーマット」「セクタチェック」など複数の方法が表示されますよね。どれを選べばいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

実は、フォーマット方法によって作業時間や安全性、データ消去の確実性に大きな違いがあります。今回は、代表的なHDDフォーマット方法と、それぞれの特徴・使いどころをわかりやすく解説します。

HDDフォーマットとは何か?

HDDフォーマットとは、ディスクの使用準備を整える作業のことです。

フォーマットを行うことで、HDD内にデータを保存するためのファイルシステム(NTFSやFAT32など)が作成されます。

フォーマットには大きく分けて物理フォーマットと論理フォーマットの2種類がありますが、私たちが実行するのは論理フォーマットです。

今回は、その中でも具体的な方法として以下の3つをご紹介します。

クイックフォーマット

特徴とメリット

クイックフォーマットは、最も手軽で短時間で終わるフォーマット方法です。Windowsの「ディスクの管理」やフォーマットメニューで、数秒~数分で完了します。

実際に行われている処理は、「ファイルシステムの構造を初期化し、過去のデータの「管理情報」を削除する」だけです。

データそのものは消去されずに見えなくなるだけなので、復元ソフトを使えば元の状態に戻ります。

デメリット

クイックフォーマットでは不良セクタ(物理的な欠損領域)のチェックは行われません。

中古HDDや長期間使っていなかったHDDをクイックフォーマットした場合、後から読み取りエラーが発生するリスクがあります。

通常フォーマット(フルフォーマット)

特徴とメリット

通常フォーマットは、ファイルシステムの初期化に加え、HDD全体の不良セクタチェックも同時に行う方法です。

Windowsでは、フォーマット時に「クイックフォーマット」のチェックを外すと、通常フォーマットが実行されます。

容量にもよりますが、数十分から数時間かかります。しかしHDDに物理的な問題がないかどうかを確認しながら初期化できるため、安全性と確実性重視の方にはおすすめです。

デメリット

時間が非常にかかる点が最大のデメリットですね。正直長いです。

また、過去にハードな使われ方をしたHDDでは不良セクタが多く、フォーマットが途中で失敗することもあります。

badblocksコマンド(Linux)

特徴とメリット

Linux環境でHDDの物理セクタチェックと書き込みテストを行う場合に使われるのが、badblocksコマンドです。

HDD全体に対してランダムデータの書き込みと読み取り検証を行い、不良セクタがあるかどうかを徹底的にチェックします。

中古HDDの状態確認や、重要なデータ保存前の検査として実行する方が結構いますね。ベテランの自作PCユーザーやサーバー管理者に利用されています。

デメリット

この方法は非常に時間がかかります。HDD容量が2TB以上の場合、数十時間単位での作業が必要になることも。

また、HDD内の全データが完全に消去されるため復旧は不可能です。

最も手軽でおすすめの方法は?

ここまで3種類のフォーマット方法をご紹介しましたが、どれが最もおすすめかは用途によって異なります。

新品のHDD → クイックフォーマットでOK

新品のHDDであれば工場出荷時に物理検査が行われているため、クイックフォーマットで十分です。

中古HDDや長期間放置HDD → 通常フォーマットを推奨

中古HDDや以前にエラーが発生したことがあるHDDでは、通常フォーマットを行い、不良セクタがないかを確認しておきましょう。長いですが我慢です。

信頼性最重視 → badblocksコマンド

仕事用バックアップや長期保存データ用HDDなど信頼性を最優先する場合は、時間がかかってもbadblocksコマンドでの全セクタ検査が最適です。

ただし一般的なPCゲーマーには不要だと思いますね。私の周囲でもここまでやる方はほとんどいなくなりました。

普通はクイック、古いHDDなら通常フォーマットでOK

HDDフォーマットには、「クイックフォーマット」「通常フォーマット」「badblocksコマンドによる徹底検査」と、複数の方法があります。

新品HDDや新しめのHDDならば、クイックフォーマットが最も手軽でおすすめです。

中古や不安要素のあるHDDでは、通常フォーマットを使いましょう。まあ、大半はクイックで十分だと思います。

Nvidia製グラボのブラックスクリーン問題、古いモデルでも発生?

何かと話題の尽きないNvidia製のグラボですが、2025年になって「ブラックスクリーン」問題が発生しています。

いったいどのような問題で、どのグラボが対象なのでしょうか。

突如発生したブラックスクリーン問題とは

ここ数ヶ月、NVIDIA製のGPUを使用しているユーザーの間で、PC使用中に突然画面が真っ黒になり、操作不能になる「ブラックスクリーン現象」が相次いで報告されています。

とくに2024年後半以降に配信された572番台ドライバー以降で報告が多いようですね。最初はRTX 4000シリーズが中心とされていましたが、現在ではRTX 3000番台・2000番台の旧世代モデルにも被害が拡大しています。

ブラックスクリーン現象の症状と傾向

報告されている主な症状は以下の通りです。

・ゲーム中や起動直後に画面が突然真っ黒になり、信号が消失
・GPUファンが最大回転になり暴走状態に入る
・ハードリセット(強制再起動)しないと復旧できない
・発生タイミングがランダム(高負荷時に限らず、アイドル時でも)

あるユーザーはRTX 3080で『アサシン クリード シャドウズ』のベンチマーク中に発生し、以降ゲームが再起動できなくなるという深刻な事態に陥ったとか。

PCの「ブルースクリーン」は昔からよくありますが、グラボ由来のブラックスクリーンがここまで不特定多数で確認されるのは稀ですね。

ちなみに「DARK SIDE OF THE GAMING」など複数のテックメディアによれば、RTX 3080/3070などのAmpere世代や、RTX 2080/2060などのTuring世代でも再現性ありとしています。

問題は一部の最新モデルだけではなく、広範囲にわたるドライバー互換性の問題である可能性が出てきていることですね。旧世代のユーザーにも影響があるので結構深刻です。

原因は未特定、しかし複数の要因が絡む可能性

現在のところ、NVIDIA公式から明確な原因や対応策は発表されていません。しかし、以下のような技術的な要因が複雑に絡んでいると見られています。

・572.xxドライバーの内部におけるGPUクロック制御のバグ
・UEFI(BIOS)設定との非互換性
・一部のモニター/ケーブルとの相性問題(特にDisplayPort)
・ハードウェアアクセラレーション機能との衝突
・Resizable BAR(リサイザブルバー)の有効化による不具合

また、最近のドライバーはDLSS 3やFrame GenerationなどのAI技術へ最適化を進める一方で、旧世代GPUとの調整が後手に回っていると指摘されています。

グラボの機能が増えすぎたことで、ドライバーが対応しづらくなっているのかもしれないですね。

ユーザーが取るべき対策(今すぐできること)

安定版ドライバーへのロールバック

不具合が発生している572番台を避け、「566.45 Hotfix」または「566.36 WHQL」へのダウングレードを推奨。多くのユーザーがこのバージョンで安定動作を確認しています。

UEFI/BIOSの最新化

マザーボードメーカーから最新BIOSが提供されていれば更新を。とくにResizable BARやメモリ設定に関する改善が含まれている場合、不具合が緩和されることもあります。

電源プランとハード設定の見直し

・Windowsの電源プランを「高パフォーマンス」に設定
・PCI Expressの省電力設定を「オフ」にする
・DisplayPort→HDMIへの切り替えやケーブル交換も効果的

一時的にハードウェアアクセラレーションを無効に

Webブラウザ(Chrome、Edgeなど)やDiscordなどで「ハードウェアアクセラレーション」をOFFに設定。これでクラッシュ頻度が下がる事例もあります。

今後のアップデートと対処に期待

NVIDIAは過去にも同様の表示系トラブルに対し、ドライバーのHotfixやFirmware Update Toolなどで対応してきました。今回も次回以降のGame Ready DriverやStudio Driverにて修正が入ることが予想されます。

また、一部のユーザーからはNVIDIAのサポートに問い合わせたことで個別対応されたケースも報告されているため、もし深刻な症状が継続する場合は公式サポートへの相談も検討してみてください。

PC修理の際にバックアップは必要か?

PCの不具合や故障が発生したとき、修理に出す前に「バックアップを取るべきか?」という議論がよくあります。ある方は「絶対にバックアップが必要」と主張し、また別の方は「不要」と主張することがありますよね。

現在は必ずしもバックアップが必要というわけではないようですが、バックアップをしておくことでリスクが減ることも確かです。

そこで今回は「バックアップは必要派」と「バックアップ不要派」の意見を整理し、それぞれの主張を比較してみたいと思います。

【バックアップ必要派の主張】

まず「必要派」の意見から見ていきましょう。個人的にはもっともだと思うものが多く、私もどちらかといえば必要派です。

データは修理中に消える可能性がある

修理ではストレージ(HDDやSSD)の交換やフォーマットが行われる場合があるため、データが失われるリスクがあります。

修理店によっては「データの保証はしない」と明記していることも多く、念のためバックアップを取っておくべきです。

予期せぬトラブルが起こることも

「修理作業中にストレージが破損した」「OSの再インストールでデータが消えた」など、意図せずデータが消えるケースもあります。

もし修理作業に問題がなくても、輸送時の衝撃や別のトラブルでストレージが読み取れなくなる可能性も考えられます。

個人情報や機密データの漏えい防止

バックアップを取ったうえでストレージを消去しておけば、修理業者に個人情報を見られるリスクを減らせます。

特に、仕事で使用するPCや個人情報が含まれるデータがある場合、自分でデータを管理するのが安全です。

ビジネス用途の場合で、クラウドへバックアップなどをとっていない場合はほぼ必須ですね。

【バックアップ不要派の主張】

次に不要派です。こちらはどちらかといえば「楽観的」ですね。

修理内容によってはデータが消えない

「ストレージに関係ない修理(ファン交換やバッテリー交換など)なら、データはそのまま残ることが多い」という意見があります。

現実的な問題として、ストレージの致命的な故障以外はデータがほとんど消えません。私も何度か修理に出したことがありますが、データはそのままでした。

データが消える可能性があるのは、以下3つですね。

  • ストレージ丸ごと交換(データにアクセス不可能)
  • マザーボードが故障してPC自体の起動が全くできない、BIOSにすらアクセスできない
  • 何らかの理由で初期化が必須の場合

ただし、大半の修理店では「データの保証」は行っていません。基本的には事前のバックアップをお願いされると思います。つまり自己責任ですね。

そもそもバックアップが難しい人もいる

「PCが故障して電源が入らない状態ではバックアップを取るのが困難」というケースもあります。

これは要・不要というよりも可・不可の問題なのですが、バックアップを取るのが難しいなら、修理業者にそのまま預けるしかありません。

修理が完了した後にデータにアクセスできることも非常に多いので、もう深く考えずに出すしかないですね。

修理業者によってはデータ保護の対応がある

一部の修理店では、「データ保持保証」や「ストレージを外して別のパーツのみ修理する」といった対応をしてくれる場合もあります。事前に修理店に相談すれば、バックアップを取らなくても問題がないことも。

バックアップは結局必要です

個人的には「基本的にはバックアップを推奨」します。

実際問題として修理に出してもデータが消えず戻ってくるケースは非常に多いですが、「保証」されることはまずありません。

現在はクラウドへのバックアップや大容量の外部メディア(SSDなど)も簡単に利用できますので、バックアップはこまめにとっておいても損はないですね。

「ちょっと調子がおかしいな?」のタイミングですぐにバックアップする、という程度でも十分です。修理では「データの保証がされない」という点を念頭に置いておきましょう。