Wi-Fiはあらゆる分野で使用されていますが携帯電話網と異なり通信距離は見通し距離でも100m程と短めです。その為、有線ケーブルの代用としては使用できないケースもあり決して万能とは言えません。しかし2022年に製品が登場する予定のIEEE 802.11ahを使用すれば従来のWi-Fi規格では不可能だった単独で1kmもの長距離を通信可能になります。そこで今回は、長距離通信が可能なWi-Fi規格IEEE 802.11ahについてご紹介します。
IEEE 802.11ahはWi-Fi HaLow規格
IEEE 802.11ahはこれまでに登場したWi-Fiとは異なる方向性で開発された規格であり、厳密はWi-Fiではなく「Wi-Fi HaLow」規格です。その特徴は通信距離の最大化であり、通信速度に重点を置いてきた従来のWi-Fi規格とは真逆の存在とも言えます。Wi-Fiも中継を繰り返すことで通信範囲を広げることは可能ですが、遅延が大きくなり接続が一度切れると再接続までの待ち時間が長いなど実用面で問題になるケースが多々あります。その点、単独で見通し距離1kmをカバーできるIEEE 802.11ahの性能は驚異的です。
通信速度は遅いものの必要十分な性能
規格上Wi-Fi5は6.9Gbps、Wi-Fi6に至っては9.6Gbpsという圧倒的な通信速度が特徴ですが、IEEE 802.11ahは150kbps~数Mbpsが基本で複数割り当てられた周波数帯を駆使して最大100Mbpsほどと控えめな性能です。速度を出すためには1km以下の通信範囲になりますがそれでも従来のWi-Fi規格とは比較にならない距離を通信可能です。更に、圧縮技術が向上し2Mbps程度で十分な映像を伝送可能な防犯カメラも増えており、実用面で速度が問題になることは希です。他にも環境センサーや定点カメラなどケーブル布設が難しい場所や広範囲に展開したいケースでIEEE 802.11ahの長距離通信性能が活かせます。特に屋外へ通信ケーブルを敷設した際、経年劣化などで数年ごとにケーブルの入れ替えが発生しコストがかかる問題点を無線化で一気に解決できるため期待されています。
日本国内では2022年に認可、製品登場の見込み
これまで電波が届きにくかった場所や有線ケーブルしか選択肢がなかった場所への利用が期待出来るIEEE 802.11ahですが、国内では2022年に認可された後に対応製品がリリースされる見込みです。なお、IEEE 802.11ahは2.4GHzや5GHzを使うWi-Fi規格とは異なり、波長の長い920MHzを使用する関係でアンテナも長くなっています。さらに電力消費を抑えることも考慮されており、チップの発熱も少なく子機の小型化やバッテリー駆動しやすいというメリットもあります。
まとめ
データの圧縮技術の向上に伴い、通信に必要な速度は低くなり低容量でも十分なケースが増えてきました。それに合わせて低速なもののWi-Fiを超える距離を通信可能な技術が求められ、ホームネットワークなどの需要も重なりIEEE 802.11ah規格を採用した製品が実現しようとしています。今度もWi-Fiと携帯電話網の中間を埋める存在としての無線規格が次々に登場する見込みがあり、今後の動向に要注目です。