2020年 11月 の投稿一覧

5GHz帯のWiFiが停止するDFSとは

最近になってWiFi向けに解放された5GHz帯ですが、WiFi専用ではなく、他の様々な電波も5GHz帯を使用しています。中にはWiFiよりも優先度の高い用途に使われている電波もあり、そのような電波が使用される際は5GHz帯のWiFiが干渉しないようにWiFi側が電波を停止する仕組みがあります。そこで今回は5GHz帯のWiFiが停止するDFSについてご紹介します。

DFS(Dynamic Frequency Selection)は日本特有の電波事情を解決するための機能

WiFiも使用する5GHz帯には気象レーダー波などが混在しており、WiFiが5GHz帯を占拠すると生活インフラにも影響が出てしまいます。そこで、WiFi機器には干渉するレーダー波を検出した時点で5GHz帯のWiFi電波を停止するDFS(Dynamic Frequency Selection)という機能の搭載が義務化されています。レーダー波の検知後に停止する時間は30分間であり、その後は通常動作に戻りますが一時的にネット接続が切れたり速度が低下するという現象が発生します。

5GHz帯の一部チャンネルだけはDFSの影響を受けない

5GHz帯のWiFi全てがDFSの対象ではなく、W52とよばれる36ch・40ch・44ch・48chはレーダー波と干渉しない帯域のため常に通信が可能です。よってDFSによる通信切断を避けるにはW52のチャンネルを使用するように調整する必要があり、多くのWiFi機器がW52のチャンネルを優先的に使用するように設計されています。しかし複数のチャンネルを束ねて高速な通信を実現するMIMO技術に必要なW53やW56の帯域はDFSによる影響を受けるため、レーダー波を検出した際は30分間だけ速度が低下することは防げません。

レーダー波は空港からの距離には無関係

DFS発動のトリガーになるレーダー波はあらゆる場所で飛んでおり、空港からの距離に関係なく様々な場所で使われています。W53(52ch・56ch・60ch・64ch)は気象レーダー波、W56(100ch~140ch)は他のレーダー波によって停止するためWiFi接続の防犯カメラなどを使用する際はW52の範囲で使用するか、DFSと無関係の2.4GHz帯を選択するべきです。また法人向けのWiFiアクセスポイントにはDFS発動時に通信が切れないように自動的にW52へ移行し、WiFiが切断されない機能を搭載している製品も存在します。

まとめ

2.4GHz帯よりもチャンネルが広くMIMO技術で速度を出しやすい5GHz帯WiFiですが、DFSによる影響を大きく受けてしまうことは避けようがありません。かといって国外で販売されているDFS非搭載のWiFi機器を国内で使用すると電波法に触れてしまうため、W52のチャンネルを積極的に使用するよう手動設定するなど工夫が欠かせないことは覚えておくと役に立つでしょう。

32Bit版OSやソフトウェアが使えなくなる2038年問題とは

Windows Vistaで64Bit版がリリースされ、現在では64Bit版Windowsが一般的ですが古いソフトウェアやシステムを動かすために32Bit版も需要があります。しかし、32Bit OSを取り巻く環境は非常に厳しい上に、将来的には使いたくても使えなくなる日がやってきます。そこで今回は32Bit版OSやソフトウェアが使えなくなる2038年問題についてご紹介します。

32Bit OSは2038年1月19日12時14分7秒以降に日付のカウントが狂う

WindowsやUNIXは1970年1月1日から一秒単位でカウントしており、32Bit OSでは2038年1月19日12時14分7秒に当たる2,147,483,647秒までしかカウントができません。この日を過ぎるとソフトウェアによっては日付が1970年1月1日に戻ったり、エラーを起こし正常に動作しなくなります。日付や時間はOSを含むソフトウェアにとって根幹となる要素のため、ここがおかしくなると全てが破綻してしまいます。この問題は2038年問題として以前から認知されてきましたが、64Bitが普及し旧式化した32Bitソフトウェアを修正するには障害も多く基本的には別なソフトウェアへ切り替える例がほとんどです。

64Bit OSで動作する32Bit版 ソフトウェアも2038年問題をはらんでいる

2038年問題はOSだけでなく、32Bit版ソフトウェアにも影響があります。32Bit版ソフトウェア内部の日付カウントも2038年に止まってしまう関係でソフトウェアの修正か64Bit版を作るしかありません。しかしメーカーが現存していない、後継製品がリリースされない場合の延命は難しく他のソフトウェアへ移行する以外の選択肢がないケースも珍しくありません。

Windows10の32Bit版はOEM出荷が終了している

WindowsはVistaから32Bit版と64Bit版を平行してリリースし続けていましたが、2020年5月には32Bit版のOEM供給が終了しました。これによりパソコンメーカーがWindows10 32Bit版をプリインストールした製品を出荷することができなくなりました。それでもパッケージ版の32Bit版Windows10は入手可能なためユーザーが独自に入れ替えたり、仮想マシン上に32Bit環境を構築することは可能です。

仮想マシンなどエミュレーター上でも日付を戻して運用するには限界がある

仮想マシンなどエミュレーター上に32Bit環境を作り、日付を巻き戻して古いソフトウェア資産を利用継続する方法もありますが、既にあるデータを利用するならそちらの日付修正が必要です。またネットワークやインターネットに接続する際もhttpsなどで必要になる証明書の有効期限と合わなくなり通信不能です。完全なローカルネットワーク環境ならある程度利用できるものの制約があまりにも大きすぎます。

ハードウェアも32Bit版 OSをサポートしないことが一般的になっている

32Bit版のOSやソフトウェアが動作するにはハードウェアとのやり取りを仲介するドライバの存在が欠かせませんが、現在主流のチップセットやマザーボードは32Bit版のドライバがリリースされていません。プリンターなど周辺機器では今後も当面32Bit版ドライバがリリースされるようですが、パソコン本体は64Bitへの移行がほぼ完了しているためネイティブな32Bit環境を構築することは極めて困難です。

まとめ

32Bit版のOSやソフトウェアを今後も継続利用するリスクは高く、すでにサポートしないハードウェアも出てきていることから2038年以降も延命させることは現実的に不可能と思われます。また2038年になる前に日付エラーを起こす可能性もあることから、ソフトウェア制作者がサポートしなくなった32Bit版ソフトウェアの替わりとなる64Bit版ソフトウェアを早めに探し、移行完了することが不要なトラブルを避ける最善策と言えそうです。

Windowsの標準機能でCドライブのバックアップを取得する方法と注意点

Windows10は年に2回大型アップデートがあり、その度に様々なトラブルが起きています。そのためアップデート後に以前のバージョンへ戻せるようにバックアップが重要ですが、高機能なバックアップソフトウェアを購入したりマイナーな無償バックアップソフトウェアの独自性に慣れるまでに時間がかかるなど面倒な一面もあります。

しかしWindowsには標準機能でOS全体のバックアップを取得する機能があり、活用すれば必要最小限の手間でドライブ丸ごとのバックアップも可能です。

そこで今回はWindowsの標準機能でCドライブのバックアップを取得する方法と注意点についてご紹介します。

バックアップの操作は「設定」アプリから簡単に実行可能

スタートメニューから「設定」→「更新とセキュリティ」→「バックアップ」→「バックアップと復元に移動」へ進むと別なウィンドウが開き、左側のメニューから「システムイメージの作成」を選ぶとOSのバックアップイメージデータが作成出来ます。イメージデータはCドライブ以外のローカルディスクやNAS、2TB以下ならBDディスクへ保存できます。

システム修復ディスクはインストールメディアで代用可能

バックアップイメージを使ってOSを復元する方法には大きく2つあり、OSが起動した状態で復元する方法とUSBメモリやDVDディスクから起動し復元する方法があります。

多くの場合はOSが起動しない場合に備えてバックアップイメージを作るため、非常時に備えて修復ディスクを作ることが通例でしたが現在はインストールメディアに含まれており、わざわざ修復ディスクを作成する必要はありません。

また修復ディスクは製作した時よりOSのバージョンが上がると使用できず、メジャーバージョンアップ後に毎回作り直しが必要ということもあり、必要になったときに別のパソコンでインストールメディアを作る方が現実的です。

バックアップ対象にはCドライブの全てのデータが含まれる上、イメージデータは容量が大きい

市販されているバックアップソフトウェアならTEMPフォルダやブラウザのキャッシュといった削除しても支障がないファイル群を除外してバックアップされますが、OS標準機能を使うと除外されません。

バックアップ前にディスククリーンアップを実行しておくことをおすすめします。またバックアップイメージはファイルを圧縮することでCドライブの使用容量よりも小さくなることが一般的ですが、OS標準機能では圧縮率が低く保存先の空き容量確認が欠かせません。

さらに圧縮率が低いにも関わらずイメージ作成にかかる時間も非常に長く、HDDへWindowsをインストールしているパソコンでは数時間に及ぶことも珍しくありません。

タスクスケジューラに手動追加すれば自動バックアップも可能

OS標準のバックアップ機能はwbadminコマンドからも可能であり、タスクスケジューラに追加すれば任意のタイミングで自動実行させることも可能です。

SSDなど高速な内部ストレージを搭載したパソコンでなければ1時間以上かかってしまいますが、Windowsアップデートが配信される第2水曜日直前に自動バックアップさせればいざという時にすぐに復旧できます。

まとめ

無償ながらWindows標準のバックアップ機能は必要最小限の機能を持ち合わせており、初めてイメージバックアップを始めたり、コストをかけずに確実なバックアップ環境を作りたいなら十分役に立ちます。

市販のソフトウェアのような高い圧縮率やゴミファイルの除外機能はありませんが、準備なしでいきなり始められるという点では他の製品に及びません。

もしバックアップを始めようと思った際はWindows標準のバックアップ機能を真っ先に試してみることをおすすめします。

ゲーミングPCでは避けたいWSL2

WSLはWindows10 Fall Creators Updateで追加されたWindowsからLinuxを使用するための機能です。それまではHyper-Vに対応したCPUとマザーボード、Windows10 Proを用意し、仮想マシン上にLinuxをインストールしていました。

しかしWSLを利用すればWindows10 ProにアップグレードせずにLinuxでしか動作しないソフトウェアを直接Windows上から操作可能になることで実用性の高い開発環境を構築でき注目されてきました。

最近では更に進化したWSL2もリリースされ、パフォーマンスやLinuxの再現度が向上しています。しかしWSL2はクライアントOSに与える影響も大きく、注意が必要なことも確かです。

そこで今回は、ゲーミングPCでは避けたいWSL2についてご紹介します。

WSL2はHyper-V上で動作し、Windows10も仮想マシン上で動作するようになる

WSL2はWSL1と異なり、仮想化技術であるHyper-Vを利用しLinuxOSの再現性を高めつつパフォーマンスも向上させています。

通常、Hyper-Vを実行するには必須ハードウェアに加えWindows10 Proエディションが不可欠でしたが、WSL2だけの利用なら10 HomeからでもHyper-Vを利用可能になりました。

すでにハードウェア要求を満たしたマシン構成なら手軽にWSL2を試せる半面、大きな問題もあります。それはホストOSだったはずのWindows10も一緒に仮想マシン上で動作するようになることです。

仮想マシン上でWindows10が起動する為ゲーミング性能が落ちる

WSL2を有効化するとHyper-Vも有効化され、仮想マシン上でWindows10とLinuxが起動するようになります。それまでメインメモリやGPUに直接アクセスしていたWindows10がHyper-Vで仮想マシンとなり、物理ハードウェアと仮想ハードディスク間のデータ変換が発生します。

このデータ変換によりOS全体のアクセス速度低下、つまり性能の低下減少が発生してしまいます。一般的な事務用途に使うパソコンなら支障はありませんが、より高い性能を必要とするゲーミングPCにとっては致命的です。

CPUに関しては仮想化によるパフォーマンス低下を防ぐ機能が豊富ですが、GPUの仮想化は歴史も浅く性能低下を防ぐ機能がないこともその要因の一つです。

どうしてもゲーミングPCでWSLを使いたいなら旧バージョンのWSL1がおすすめ

WSL2ほど優秀ではありませんが、Hyper-Vを使わないためハードウェア要件の低いWSL1は今後もサポートが続きます。

将来的にWSL2へ丸ごと移行することも可能なため、初めてWSLに触れる際やゲーミングPCでWSLを使いたい際は旧バージョンのWSL1がおすすめです。

まとめ

WindowsとLinuxの融合という新たな境地を開いたWSL2ですが、すべての利用シーンで最適とは限りません。WindowsとLinux間でのファイルアクセスなどWSL1の方がパフォーマンスに優れているケースもあり、Windows10のパフォーマンス低下問題を回避するためにもWSL1は今後も選択肢のひとつとなりえます。

ゲーミングPCならWSLの実行速度も十分速く、WSL2を選ばずにハードウェア性能を落とさないWSL1が賢い導入方法と言えます。