最近のグラフィックボード市場では、同じ型番でも「メモリ増量版」が登場するケースが増えています。たとえば、RTX 4060や5060シリーズにおいても、8GB版と16GB版が用意されていますよね。購入時に迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、グラボのメモリ増量版がなぜ登場するのか、そして増量によって実際にどれほど性能が向上するのかをわかりやすく解説します。

グラボにはメモリ増量版がよく出る理由

同じGPUコアを搭載していても、VRAM(ビデオメモリ)の容量が異なるモデルが発売されることは珍しくありません。このような「メモリ増量版」が多く見られる背景には、用途の多様化があります。

たとえば、最近のゲームでは高解像度テクスチャやリアルな陰影処理が行われるため、より多くのVRAMを必要とします。また、生成AIや動画編集、3Dモデリングなどの用途では、大容量メモリの恩恵が特に大きくなります。

こうした需要に応えるために、各社はベースのGPU性能を変えずに、VRAMだけを増やした「バリエーションモデル」を投入しているのです。

RTX 5060 Tiにも16GB版が登場

2025年、NVIDIAの新たなミドルレンジモデルとして登場したRTX 5060 Tiにも、メモリ容量の異なる2種類のモデルが存在します。

ひとつは従来通りの8GB版、そしてもうひとつが倍の16GB版です。GPUコアのスペック自体は同じですが、VRAM容量だけが異なる点が特徴となっています。

見た目は同じように見えても、用途によってはこの差が無視できないパフォーマンス差を生むことがあります。

メモリが増えると性能はどれくらい上がる?

結論から言えば、「常に上がるわけではないが、条件次第で大きな差になることがある」というのが実情です。

まず、フルHDやWQHDといった解像度で軽めのゲームをプレイする場合には、8GBのメモリでも大きな問題は生じません。この場合、16GBに増やしたところで性能差はほとんど出ないでしょう。

一方で、4Kやレイトレーシングをオンにした重量級タイトルになると8GBでは足りず、メモリ不足によるフレームレート低下やカクつきが発生する可能性があります。

このようなケースでは、16GB版の方が安定して高いフレームレートを維持でき、快適にプレイできるという大きなメリットがあります。

また、複数の高解像度モニターを同時に使う場合や、大量の動画素材を扱う編集作業でもメモリの差は無視できません。特に生成AIや機械学習などの用途では、モデルサイズや読み込みデータの大きさによって8GBでは動作しないケースもあります。

こうした環境では、VRAM容量の多さが「性能の天井」を押し上げる要因になります。

増量版を選ぶべき人・選ばなくてもいい人

では、誰にとってメモリ増量版は「買い」なのでしょうか。

まず、今後数年にわたって重めのゲームを遊びたいと考えている人や、4Kゲーミングを検討している人にとっては、16GBの恩恵は大きいでしょう。また、OBSなどでの同時録画・配信、あるいはAI用途・動画編集なども想定しているなら、増量版の方が安心です。

一方で、ゲームはフルHDメインでライトなタイトル中心、AIや編集作業もしないという方であれば8GBでも十分です。価格差が1~2万円ある場合は、その分をCPUやストレージに回した方が、全体の快適さにつながるかもしれません。

グラフィックボードのメモリ増量版は、将来の余裕を買うこと

高解像度や重めの作業においては、メモリ不足がボトルネックとなるケースもあり、16GBの恩恵がはっきりと表れる場面があります。RTX 5060 Tiのように同一型番で複数のメモリ構成が用意されている場合は、自分の用途と照らし合わせて慎重に選ぶことが大切です。

「同じ5060 Tiだから性能は一緒」と思わず、メモリ容量の違いが“未来の余裕”になるかもしれないことを意識して選ぶとよいでしょう。