2019年 7月 の投稿一覧

空冷式CPUクーラーで採用されている冷却機能

ゲーミングデスクトップPCでは簡易水冷タイプのCPUクーラーが常に注目されていますが、空冷式CPUクーラーも未だに多くの製品がリリースされ続けています。

メンテナンスフリーで静音かつ強力に冷却できる簡易水冷に対し、大型化や様々な冷却技術で対抗している空冷式CPUクーラーは製造コストの安さもあってメーカー製パソコンなどでは圧倒的なシェアを誇ります。そこで今回は空冷式CPUクーラーで採用されている冷却機能についてご紹介します。

ヒートシンクの大型化だけでは十分に冷却できない現在のCPU

マルチコア化と高クロック化が進み、Intelが一部の上位モデル以外はソルダリングを廃止したことによりCPUの発熱は増え続けています。冷却が間に合わなければCPUのブーストクロックに達しないばかりかダウンクロックして本来の性能を発揮しなくなります。

さらにCPUをはじめとする半導体の発熱は瞬間的に発生するため、熱をすぐにヒートシンクまで伝達させる必要があります。そのため従来のアルミ製ヒートシンクを大型化しただけでは熱伝達が遅すぎて能力を発揮しにくくなったという経緯があります。

最もポピュラーなヒートパイプ

ヒートパイプは文字通り金属製パイプをヒートシンク内に組み込んだタイプです。ヒートパイプの中は特殊な液体が封入されており、CPUの熱で片側では蒸発・ヒートシンクで冷却されて片側では凝縮して液体に戻るという流れが生まれます。

ヒートパイプは加工が容易でコストも安い上に熱移動が早いため、大型ヒートシンクへCPUの熱を隅々まで届ける目的で採用されています。高性能なCPUクーラーほどヒートパイプが太く、本数も多い傾向にありますが、封入されている液体の交換不要なためメンテナンスフリーです。なおヒートパイプはノートパソコンやグラフィックボードでも多用されています。

高価なCPUクーラーで採用されるベイパーチャンバーはヒートパイプよりも高性能

ベイパーチャンバーはヒートパイプ同様に特殊な機体を封入して熱輸送を行いますが、ヒートパイプは一本一本が個別に熱輸送しているため非効率な面があります。

ベイパーチャンバーはCPUクーラーの土台である金属ベースを空洞化・液体を封入することで無駄なく一気に熱輸送できるようにしています。もちろん製品ごとに専用設計であるため価格はヒートパイプタイプよりも高額ですがその分、高性能です。

従来は平面的なベイパーチャンバーとヒートパイプの組み合わせが主流でしたが、U字型など立体的な構造を採用してヒートパイプを廃止するハイエンド製品が登場しています。

一世を風靡したペルチェ素子は癖の強さから採用製品が激減

ペルチェ素子は電圧をかけると右から左に熱を移動させる性質があり、一時期はオーバークロック用途やハイエンド製品で使われてきました。ペルチェ素子を複数枚重ねれば移動できる熱量も増え、オーバークロックによる通常では発生し得ない熱量を逃がす手段として注目されました。

しかし、熱移動させすぎると結露してマザーボードがショートするリスクがある上にペルチェ素子自体の電力消費が多く、その電力はペルチェ素子動作時に廃熱に変わるという癖の強い面もありました。

実際にペルチェ素子を運用するにはCPUの熱量+ペルチェ素子の熱量を逃がす工夫と、結露対策が不可欠と言うこともありペルチェ素子を採用したCPUクーラーは少数派でした。現在では一部のノートパソコン用冷却台などで採用されるにとどまっています。

まとめ

空冷式CPUクーラーの性能はヒートシンクの大きさと熱輸送手段でほぼ決まってしまうため、どれだけ大きく高効率な仕組みかが命です。最近では直径6mmのヒートパイプを6本以上採用した製品が主流であり、ハイエンド製品では本数の増加や特殊形状のベイパーチャンバーの採用が目立ちます。

簡易水冷と違ってメモリやCPU周りのコンポーネントと干渉するかどうか製品サイズや適合チェックは欠かせませんが、高性能な空冷式CPUクーラーなら静音化も期待できるため製品選びの際は熱輸送の方式についてよく確認することをお勧めします。

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ゲームサーバーやゲーミングPCを守るUTMを自作する方法

法人や商用利用で利用されることが多いUTM(Unified Threat Management)はファイヤーウォールだけでなく通信を監視することで不正アクセスやウイルス感染からネットワーク全体を守ることが出来ます。

UTM一台でネットワークに関する全ての保護ができることから自宅でゲームサーバーを公開する際やNASの外部アクセス機能を使う際は是非とも導入したい周辺機器の一つです。しかしUTMはゲーミングPCよりも高価な製品も多く個人ユーザーには敷居が高いため普及が進まなかった経緯があります。

それでも近年はネットサービスの形態が多様化したことで、個人ユーザーにもUTMが必要と言われはじめています。そこで今回は個人ユーザー向けUTMを格安で自作する方法についてご紹介します。

UTMは本体と利用ライセンスでそれぞれ費用がかかる

UTM本体はシンプルなパソコンとほとんど変わりません。LANポートが複数搭載されている以外はCPUやメインメモリといった基本的なパーツはパソコンと共通する物も多く、実際にパソコンをUTMに転用することができます。

そしてUTMには本体とは別にネットワークを監視・保護するソフトウェアがセットになっており、ソフトウェアの利用年数によってライセンス費用が決まっています。

UTM本体が安くてもソフトウェアライセンスが高価なメーカーが多く、個人ユーザーが導入を検討したときにまず問題になる毎年の高額なライセンス料はUTM普及の妨げになっています。

個人使用なら無償で使えるUTMソフトウェアがある

各種セキュリティ製品メーカーであるSophosはUTMも手がけており、UTM用のOSとソフトウェアがセットになった「Sophos XG Firewall Home Edition」を個人使用ユーザーに限り無償公開しています。

Sophos XG Firewall Home Editionはマルウェア対策・WEBサイトチェック・フィルタリング・不正侵入防御・VPNをはじめとしたSophos製UTMと同じ機能があります。しかもソフトウェアライセンス料は無料なため個人ユーザーはUTM本体の代わりとなるパソコンを用意するだけでUTMを手に入れることが出来てしまいます。

UTMにするパソコンは古いパソコンや中古のサーバーマシンが最適

Sophos XG Firewall Home Editionは4コアのCPUと6GBまでのメインメモリをサポートしています。そしてUTMはルーターとパソコンの間に接続するため有線LANもふたつ必要です。USB接続のLANアダプタやPCI-Express接続のLANボードを増設してデュアルLAN構成にしましょう。

UTMソフトウェアの負荷は高くないため型落ち品のサーバーマシンや中古のサーバーマシンへインストールして24時間フル稼働させると安価にUTMを導入できます。買い換えて使わなくなたパソコンを流用する方法もありますがノートパソコンは発火のリスクが高いためデスクトップパソコンを使いましょう。

Sophos製UTMソフトウェアはユーザー登録必須

Sophos XG Firewall Home EditionはダウンロードとセットアップにSophosで取得したアカウントが必要です。アカウント取得は無料ですがパスワード等を忘れると最初からやり直すことになります。ダウンロードしたIOSデータをUSBメモリやDVD-Rへ書き出してUTMにするパソコンへセットアップしていきます。

セットアップ完了後はUTMとして使用出来るようにしますがDHCPなどルーターと重複する機能に関しては無効のまま設定を進めることで機能衝突を防ぎましょう。設定完了後は常時稼働させても良いですし、ネットへ接続するとき・ゲームサーバーを公開するときだけUTMを稼働させることもできます。

まとめ

一般的な購入方法では高額になってしまうUTMも低スペックなパソコンが一台あればコストをかけずにUTM化出来てしまいます。マインクラフトや7 Days To Dieなど仲間内だけで楽しみたいゲームにはどうしてもゲームサーバー構築とネット上へ公開というハードルとセキュリティ問題が付きまといます。

しかしUTMがあれば一時的にWindows10をゲームサーバーとして運用する際もある程度安心出来る上に日々のネット利用は格段に安全になります。もちろんネットワークに関する知識や勉強は必要ですが、楽しいゲームプレイを安全に続ける上で役立つことばかりですのでこれを期に挑戦してみてはいかがでしょうか。

G-Tune発!業界初のKaby Lake-G搭載ゲーミングノート

2018年に発表され、ゲーミングPC界隈でも話題になった「Kaby Lake-G」を覚えているでしょうか。Kaby Lake-Gは、IntelとAMDの技術を持ち寄って作られた第8世代Intel製CPUのコードネームです。

発表からしばらく音沙汰が無かったのですが、やっとG-TuneからKaby Lake-G搭載のゲーミングノートが登場しています。そこで、異色のCPUともいえるKaby Lake-Gを搭載したゲーミングノートPCを解説してみたいと思います。

そもそもKaby Lake-Gとは?

冒頭でも少し触れましたが、Kaby Lake-G(KBL-G)は、IntelのCPUにAMDのモバイル向けGPUをドッキングさせたようなCPUです。

CPUというよりは、APUに近いと言ったほうが適切かもしれません。Kaby Lake-Gには他のIntel製CPU同様に内蔵GPUの他に、AMDのGPUも積んでいるという、異色の存在だからです。

Kaby Lake-Gの概要

Core i7 8809G…4コア8スレッド、3.1~4.2Ghz動作、Radeon RX Vega M GH内蔵(1063 ~1190MHz動作)、TDP100W
Core i7 8709G…4コア8スレッド、3.1~4.1Ghz動作、Radeon RX Vega M GH内蔵(1063 ~1190MHz動作)、TDP100W
Core i7 8706G…4コア8スレッド、3.1~4.1Ghz動作、Radeon RX Vega M GL内蔵(931 ~1011MHz動作)、TDP65W
Core i7 8705G…4コア8スレッド、3.1~4.1Ghz動作、Radeon RX Vega M GL内蔵(931 ~1011MHz動作)、TDP65W
Core i5 8305G…4コア8スレッド、2.8~3.8Ghz動作、Radeon RX Vega M GL内蔵(931 ~1011MHz動作)、TDP65W

ちなみにRadeon RX Vega M GHは「GTX1050Ti以上」、Radeon RX Vega M GLでも「GTX1050」に匹敵する性能があります。内蔵GPU扱いでこれだけのグラフィック性能を叩き出すわけですから、かなり革新的なCPUであることがわかりますよね。

ただし、実際に搭載されているPCは非常に少なく、日本ではあまり出回っていませんでした。特に「Radeon RX Vega M GH」内蔵のゲーミングノートPCは皆無といって良いほど。一部のNUCだけに搭載されている、レアなCPUだったのです。

Core i7 8709G搭載のG-Tune製ノートPC

しかし、BTO大手のマウスコンピュータが、Core i7 8709G搭載のゲーミングノートPCを開発しているそうです。

つまり、GTX1050Ti以上のグラフィック性能を持った「Radeon RX Vega M GH」が積まれています。しかもサイズは13.3型。持ち運びやすいサイズで、1050Ti以上の性能を持ったゲーミングノートPCというのは、かなり新鮮ではないでしょうか。

スペックは以下のとおりです。

・CPU…Core i7 8709G(4コア8スレッド、3.1~4.1Ghz動作、Radeon RX Vega M GH内蔵(1063 ~1190MHz動作)、TDP100W)
・13.3型フルHD
・メモリ16GB搭載可能
・重量1.6kg

Core i7 8709Gの性能は、「Core i7-8750H+GTX 1060(3GB版)」に相当します。この性能を1.6kg/13.3インチにまとめられるわけです。

問題は価格だが……?

価格がどの程度になるかが問題ですが、私の感覚では15~20万円クラスなら十分に買いだと思います。

G-Tuneとしては「G-Tune NEXTGEAR-NOTE」として販売予定とのこと。もし15万円未満で発売されれば、価格と性能のバランスが非常に良い、完成されたゲーミングノートPCのひとつになりそうです。

>> ゲーミングPCはデスクトップとノートのどちらにすべきか

CPUの製品保証とオーバークロックについて

自作パソコンを作るならリテールパッケージのCPU購入が基本ですが付属するメーカー純正クーラーや保護パッケージは捨ててしまいがちです。

しかしCPUの保証を受ける際にはこれらの付属品が必要であり、いざという時には数万円の出費を節約できる可能性があります。そこで今回はCPUの製品保証とオーバークロックについてご紹介します。

保証期間は3年が基本だが故障率は極めて低い

定格で運用しある程度正常に冷却できていればCPUが故障する確率は極めて低く、中古品のCPUであっても外的要因以外で故障することは希です。

電源ユニットやマザーボードからの電源供給に問題がありCPUをダメージを受けるケースはありますがそれでも一発でCPUが壊れるような自体に発展することはほぼないと言えます。

しかし、正しく使用していたとしても精密部品である以上、故障のリスクは抱えており3年間の保証があるテールパッケージが一般的なのはそのためです。

CPUが故障しやすいオーバークロックや社外品クーラーが原因の基板焼けは保証外

いくら保証があるといっても定格以上の電圧をかけるオーバークロックや社外品のCPUクーラーが原因のCPU焼け等で生じた故障は保証外です。

水冷の場合は冷却液の揮発や漏洩で冷却不足に長期間陥ると故障の原因になります。特に無理なオーバークロックはCPU回路を一瞬で焼いてしまいやすく、CPUを再購入するはめになります。

海外からの並行輸入品でも保証を受けられるのはIntelの強み

通常パソコンパーツはメーカーから国内代理店経由で販売されるため国内サポートも販売代理店が行うことが一般的です。そのため代理店経由で購入していない並行輸入品や個人輸入品は保証やサポートを受けられないことがほとんどですが、Intel製CPUだけはグローバル保証ため対応してもらうことが可能です。

提供される交換品は再生品が基本

CPUは常に生産している訳ではなく、一定期間製造後は再生産されることはありません。そのため故障したCPUの交換品は新品の場合もあれば再生品が届く場合もあります。

保証規約には再生品である旨が記載されていますが実際に再生品が届かどうかはIntelの在庫状況次第です。交換後の製品も引き続き保証が提供されるためユーザーの不利益になることはありませんがせっかくなら新品を期待したところです。

Intelは一部の製品でPerformance Tuning Protection Planが復活

オーバークロックによるCPUの破損は保証外としながらもオーバークロック対応CPUをゲーミング向けにリリースし続けていますが、Intelからはオーバークロックによる破損時に一度だけ製品を交換対応する保証プランが再登場しました。

通常の保証に追加費用を支払って加入するPerformance Tuning Protection PlanはCore2 Duo世代で一時期採用されていましたが、第9世代Coreiシリーズで復活しオーバークロックによる破損も保証されます。

製品購入後1年以内ならPerformance Tuning Protection Planへ加入することが可能で一回だけオーバークロックによる破損したCPUを再生品と交換できます。

まとめ

故障率は高くありませんが冷却や電圧等による影響を受けやすいCPUの保証は他のパソコンパーツよりもやや厳しい内容になっています。特に自作パソコンの醍醐味でもあるオーバークロックによるトラブルが保証されないことは防いでおきたいですから、せっかくなら保証プランへの加入をしておいたほうがいいでしょう。