近年、自作PC界隈でじわじわと人気を集めている「ピラーレスケース」。
その名の通り、フロントとサイドの境目にある角柱(ピラー)を取り除いたケース構造で、ガラスパネルが途切れなく繋がる美しいデザインが特徴です。
見た目のインパクトは抜群ですが、一方で「剛性が低いのでは?」「強度面で不安がある」といった声も少なくありません。
今回は、通常のPCケースと比較しながら、ピラーレスケースの実際の剛性や使用感を詳しく解説します。
ピラーレスケースとは何か?
ピラーレスケースとは、前面と側面のガラスパネルの間にピラー(縦の支柱)を設けない設計のPCケースです。
フロントとサイドのガラスがL字型にシームレスに繋がり、内部パーツの視認性が非常に高いことが特徴ですね。
通常のPCケースでは、前面と側面の間に金属製のフレーム(ピラー)があり、これがケース全体の剛性を担っています。
しかし、ピラーレスケースはその支柱を省略することで、デザイン性と内部の見やすさを最優先した構造になっています。
代表的な製品としては、Lian Li「O11 Dynamic」シリーズやHYTE「Y60」などが挙げられます。
通常ケースと比べた剛性の違い
では、実際にピラーレスケースと一般的なミドルタワーケースを比較して、剛性はどう違うのかを見ていきましょう。
まず、構造的な観点から言えば、ピラーレスケースは剛性面で不利です。
前面と側面のフレームが欠けているため、パネルを外した状態では、フレーム自体の“ねじれ”や“たわみ”を感じやすいのが事実です。
特に、サイドガラスを開けた状態でケースを持ち上げると、通常のケースよりもフレームが「しなる」感覚があります。
一方、ガラスパネルを装着してしまえば、構造物としての剛性はある程度回復します。
パネル自体がケースの一部として「面剛性」を担うため、組み上げ後のグラつきや不安定さはほとんど感じません。実際の家と同じですね。
柱のない家は、壁自体が構造の剛性を担っているので地震でも崩れません。なので「パネルを付けている状態」をベースとする剛性感は十分にあります。
ただし、持ち運びやメンテナンスでパネルの着脱を繰り返すと、通常ケースよりも歪みやすいかもしれません。
実際に、ピラーレスケースユーザーの中には、「パネルを外したまま動かしたら微妙に歪んだ」「フレームの角がわずかにズレた」という報告も散見されます。
このあたりはピラーレスだからと言うよりは「製品そのものの品質」のような気もしますが…。あまりにも安いケースはリスキーかもしれないですね。
実使用で剛性の違いは感じるか?
では、実際にピラーレスケースを使っていて、通常ケースと比べてどの程度剛性の違いを体感するのか。
私はLian Li O11 Dynamic XL(ピラーレス)を一時敵に使っていました。このケースはピラを脱着できるのでピラーレスと通常モードを併用できます。
まず、設置後の使用時に剛性の違いを意識する場面は、ほぼありません。デスク上で運用している限り、ケースが「たわむ」「揺れる」といった現象は起きないと言っていいでしょう。
むしろ気になるのは、ケースを動かすタイミングです。ピラーレスの場合、パネルを外して内部を掃除する際やケースを寝かせるときなどに、「あ、ちょっとフレーム柔らかいかも」と感じる瞬間がありましたね。
特にパネル未装着時は、フレーム自体のたわみを感じやすかったです。「持ち方に気をつけないと歪ませそう」という不安感がちょっとだけありました。
ただし、通常使用における安全性や耐久性に差を感じたことは一度もありません。重いGPUを搭載しても、ガラスパネルが正しく取り付けられていれば、フレームが曲がったり沈み込んだりすることはありませんでした。
剛性以外のメリット
剛性面でやや劣るとはいえ、ピラーレスケースにはそれを上回るメリットがあります。
まず、圧倒的に見た目が良いです。柱一本でここまで変わるか、というくらいにスタイリッシュになります。内部パーツが非常に映えるため、RGBライティングや美しい配線を楽しみたいユーザーには最適です。
また、開放的なレイアウトのおかげで作業性も結構高いですね。前面の柱がないので、斜め前から手を入れて作業する場合は非常にやりやすかったです。
パネルを外すのが面倒ですが、ケースファンの交換などはストレスフリーでした。
使う人を選ぶが「見た目重視」なら結構アリ
ピラーレスケースは、通常のPCケースと比べると構造的な剛性はやや低いのが事実です。
パネル未装着時や持ち運び時には、フレームのしなりや歪みやすさを感じることもあります。
しかし、パネルをしっかり取り付けた運用状態では、実使用で剛性不足を感じることはほとんどありません。
その代わりに得られる、美しいビルド映えと開放感あるレイアウトは、通常ケースでは味わえない魅力です。
「ケースを見せる」「配線美を楽しむ」「内部構造を常に眺めたい」という方にとって、ピラーレスケースは非常に魅力的な選択肢と言えます。
普通に設置した後の剛性は十分実用的ですし、検討対象に加えてみても良いのかもしれません。