2025年現在、グラボのメモリには「GDDR5」「GDDR5X」「GDDR6」の3つが使われています。
これらはGPUに搭載されるビデオメモリ(VRAM)の規格であり、描画処理などに大きな影響を与える重要な要素です。
今回はは、GDDR5、GDDR5X、GDDR6の技術的な違いと進化のポイントを、PCゲーマー向けにわかりやすく解説します。
GDDR5:長く使われた高コスパメモリ
GDDR5は、2008年に登場した規格です。「Graphics Double Data Rate 5」の略称で、その名のとおり1クロックにつき2回のデータ転送を行うDDR技術を採用しています。
当時のGDDR4と比べて動作クロックの高速化と帯域幅の増加を実現し、長らくGPU市場で主流のメモリ規格となりました。
帯域幅は最大8Gbps(ギガビット毎秒)程度で、これはフルHDゲームや一般的な3D処理においては十分な性能です。
技術的には、単一の32bitバスを用いたデータ転送を採用しており、構造がシンプルで実装コストが低い点が特長です。省電力化にも配慮されており、1.5~1.35V程度で動作します。
ただし、より高解像度や高フレームレートが求められる最新のゲーム用途では、帯域幅の限界がボトルネックとなる場合もあります。
GDDR5X:中間世代の高速メモリ
GDDR5Xは、GDDR5の拡張版として2016年に登場しました。
見た目や名称はGDDR5に似ていますが、内部構造と信号伝送技術に大きな改良が加えられています。最大の違いは、データプリフェッチの方式にあります。
GDDR5が「x4プリフェッチ」なのに対し、GDDR5Xは「x8プリフェッチ」を採用しており、同じクロックでもより多くのデータを同時転送できるようになっています。これにより、帯域幅は最大10~14Gbps程度まで拡張されました。
また、メモリコントローラーとの通信には「POD(Pseudo Open Drain)」という方式が用いられ、電気的ノイズの低減と高速動作の両立を実現しています。
動作電圧は約1.35Vで、GDDR5と同等かやや低めです。
GDDR5XはNVIDIAのGeForce GTX 1080やTitan Xなど一部のハイエンドGPUに採用されましたが、コストや製造難度の高さから一時的な橋渡しの役割にとどまりました。
GDDR6:現行主流の次世代メモリ
GDDR6は、2018年以降に登場したグラフィックメモリの最新世代であり、現在主流となっている規格です。
GDDR5Xをベースにさらなる高速化・高効率化が図られており、最大16~18Gbps(将来的には24Gbpsも視野)と、帯域幅が飛躍的に向上しています。
技術的な進化の一つとして、「チャンネル分離構造」が挙げられます。1チップあたり2つの独立した16bitチャンネル(計32bit)を持ち、それぞれが並列にデータ転送を行うことで、アクセス効率が格段に向上しています。
また、プリフェッチ方式もx16となり、1クロックサイクルでより多くのデータを転送可能です。さらに、GDDR6では消費電力の最適化も行われており、1.35Vと低電圧ながら高性能を維持できるよう設計されています。
高帯域・高効率・低消費電力を兼ね備えたこの規格は、4Kゲーミングやレイトレーシングといった重負荷処理にも十分対応できる設計となっています。
最新のNVIDIA RTX 30シリーズやAMD Radeon RX 6000シリーズにも採用されており、事実上の標準規格となっています。
迷ったらここを見よう:規格別比較まとめ
以下に、GDDR5/GDDR5X/GDDR6の違いを箇条書きでまとめました。
GDDR5の特徴
・最大帯域は約8Gbps
・プリフェッチ方式はx4
・動作電圧は1.5?1.35V
・採用GPUはGeForce GTX 970、Radeon RX580など
・実装コストが低く、長期にわたって普及
GDDR5Xの特徴
・最大帯域は約10?14Gbps
・プリフェッチ方式はx8
・動作電圧は約1.35V
・採用GPUはGeForce GTX 1080など一部のハイエンドモデル
・GDDR5の拡張版として高速化を実現した中間世代
GDDR6の特徴
・最大帯域は16?18Gbps(一部モデルでは24Gbpsも)
・プリフェッチ方式はx16
・動作電圧は約1.35V
・採用GPUはGeForce RTX 3060?4090、Radeon RX 6000シリーズなど
・2チャンネル構成による高効率な並列処理と省電力性が強み
最新ゲーム体験を支えるメモリ選びを
GDDR5、GDDR5X、GDDR6はいずれも、PCゲーマーの描画体験を支える重要なテクノロジーです。
どの規格を選ぶべきかは、プレイするゲームの解像度やフレームレート、そして予算によっても異なります。
高リフレッシュレートやレイトレーシング対応ゲームを本格的に楽しむなら、やはりGDDR6搭載モデルが最適です。
メモリ規格は一見地味な仕様項目に見えますが、その内部には多くの技術的進化が詰め込まれており、GPU性能を語るうえで欠かせない要素です。
今後登場が予想されるGDDR7にも注目しつつ、現行世代の理解を深めることで、自分に合った最適なGPU選びにつなげてください。