かつてグラボを2枚刺しで運用することがブームになった時代がありました。Nvidiaの「SLI」やAMD(当時はATI)の「Cross Fire」などが話題になった時代です。
しかしグラボが高性能化するに従い、こうした2枚刺しの文化は廃れていきました。今は一部の愛好家のみがグラボの複数運用を行っているようですね。
絶対的な性能を求めるなら、グラボ2枚刺しは非常にロマンがあります。今回はグラボ2枚刺しの特徴とメリットについてまとめてみました。
NVLink SLIの概要とメリット
NVLink SLIは、NVIDIAのGPU間接続技術の一つであり、複数のNVIDIAグラフィックボードを効果的に連携させるものです。
NVLinkにより、GPU間のデータ転送が高速化され、複数のGPUが効率的にデータを共有し、処理能力を向上させることができます。
NVLink SLIを使うための条件
- 認証マザーボードの使用
- ブリッジ用コネクタ(別売り)の調達
- ブリッジ用コネクタを接続する場所があるグラボの調達
- 同一世代、同一モデルのGPUを使用していること
NVLink SLIを使用した場合と1枚刺しの場合を比較すると、当然のことながらSLIを組んだほうが性能はあがります。しかし、100の性能を持つグラボでSLIを組んだとしても、性能が200になるわけではありません。
1枚刺しの場合と比較すると、およそ10~30%の性能向上に留まるというのが一般的な見解です。ただし、一部のゲームやアプリケーションは、複数のGPUを効果的に活用するために最適化されています。
このような場合では、NVLink SLIによる性能向上が著しく、場合によっては50%程度の性能向上を見せることもあります。
CrossFireXの概要とメリット
AMDのグラボ複数運用といえばCrossFireXですね。概要やメリットはSLIとほぼ同じですが、AMD製のグラボのほうが全体的な価格が安いため、コストパフォーマンスはSLIよりも少し上かもしれません。
また、NVLink SLIと違って認証マザーボードやブリッジ用コネクタが不要であり、導入のハードルは低めです。
CrossFireXを使うための条件
- 認証マザーボードの使用
- 同一世代(同一シリーズ)のグラボの調達
CrossFireXの面白いところは、完全にグラボの型番が一致していなくても動作してしまう点ですね。例えばNVLink SLIを組むならばRTX3060を2枚用意する必要があるのですが、CrossFireXの場合はRX580とRX570でも動作してしまいます。
ただし、Vega64とRX480のように世代が異なると動作に支障をきたすかもしれません。また、デメリットとしてはNvidia製グラボよりも全体的な消費電力が高めなので、電源にかかる負担が大きいという点が挙げられます。
ミドルレンジグラボが余っているのであればCrossFireXは魅力的な選択肢なのですが、電源容量がネックになって運用できない場合が多いのです。
さらにCrossFireXは1枚刺しと比較すると性能向上の幅が小さめで、場合によっては1枚刺しのときと大差ないレベルになってしまうことすらあります。ハードルは高いものの、しっかりと効果を出したいのであればNVLink SLIのほうがおすすめですね。
低予算で性能3割アップを狙えるグラボ2枚刺し
NVLink SLIやCrossFireXは、環境さえ整えば、グラボ1枚ぶんで性能をしっかり底上げできるアップグレード方法です。特にCrossFireXはかなり手軽で、ほとんどのマザーボードが対応しているためにハードルが低いですね。
中古でRXシリーズのミドルレンジクラスを買ってくれば、すぐにでも環境が整いますし。しかし、肝心の性能向上は未知数で、「失敗しても痛くない人向け」と言えます。
ちなみにNVLink SLIに比べるとCrossFireXに対応しているタイトルは少ないです。有名どころでは「黒い砂漠」なんかが対応していますね。
もし予算や環境が適合するならば、中古のグラボ1枚で性能アップが期待できるグラボ2枚刺しに挑戦してみてください。
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